スレイヤーズ2次創作のための20のお題

02 【疚しい気持ち】

ガウリイがリナと出会ったのは、彼女が15歳の時。
絶対死にたくない、だから、勝つつもりで戦うのだ。と、男二人で、死を覚悟した戦いに挑む決意をしたというのに、彼女はただ一人、力強い言葉でそう言った。
それは、怖いもの知らずな、子供の言葉と似ている。世界が自分中心に動いている。と思い込んでいる子供に。
それを、圧倒的な力を見せ付けた魔王に対して使った彼女は、決して子供のそれとは違った。
“死にたくない”それは、男二人も、思ってはいた。それと同時に、“死んでも仕方がない”と。戦った末の結果なら、甘んじて受ける。それだけだったのだ。
それは、二人がそういう世界を生きて来たからだ。
だが彼女は、それを“男の『意地』『ロマン』”と言って、“そんな下らないものは捨てろ”と、説教をし、あまつさえ、その男二人の戦いに向けての心意気をひっくり返してしまった。
そして、本当に生き残ってみせた。
生きる事を楽しみ、それに対する、貪欲なまでの行動力を持っていた彼女からは、眩しさと、彼女自身の明るい未来を、ガウリイに感じさせた。
戦いを終え、目的地に着き。それで別れてしまうのが、惜しい気がしたのは、彼女と居ると、可能性を感じたからだ。
所が、彼女が同行を言い出した。
世間慣れしている筈なのに、時折危うく見える彼女を、放って置くのは忍びなく、暫くのつもりが、ズルズルと行動を共にした。
ガウリイが本気を出せば、いつでも撒く事は出来たのに、それをしなかったのは、彼女に出会う前に会った、あるお節介な男の言葉が有った。
彼女との初めての共同戦線で、感じたのは、もしかしたら、その男の通りに、何か出来るかもしれない。と、そして、彼女の側に居るにつれ、光明を見出だせてきた。
そして、ガウリイにとって、疫病神としか思えなかった家宝は、いつしか彼女の側に居る為の、口実と手段になっていた。
それは、事在る毎に名乗っていた“保護者”も同じである。最初の内は、純粋な親切心。騒ぎを起こす事が得意な彼女を、叱り、留め、諭す為に。
が、“保護者”を逸脱した想いに気付いてしまい、自らの枷として、そして、彼女の明るい未来を護る為の口実と手段に。
やさぐれて、暗闇を生きて来たガウリイにとって、明るい場所で溌剌と生きて来たであろう彼女は、眩しすぎて、そんな気持ちは疚しい物に思え、表に出す事を憚り、ひた隠しにしていた。
疚しいと言っても、相手は年端もいかぬ少女で、身体も余り発達していなかったので、下心は無かった。
神聖視していた彼女を、想い慕う。それだけでも、自分の気持ちを疚しいと思っていたのだ。
が、時は、少女を成長させる。
その年頃の、女性の成長は著しく、目まぐるしく変化していく彼女に、ガウリイは戸惑うばかり。
彼女自身がコンプレックスに思っている部位は、あまり変化しなかったのだが、女性らしい丸みを帯び、女性らしいしなやかさが出てきた。
一番の変化は、匂いだ。花を思わせる香しい匂いを、彼女は放つ様になった。
元々、目立つ存在で、注目は浴びていた彼女だったが、その頃になると、明らかに異性の目を奪っていた。
それは、ガウリイにも言える事だった。
ずっと一緒に居て、その変化を見守っていた彼は、彼女を異性として、強く意識してきてしまった。
彼女に出会った頃から、情操教育に悪い、と敬遠していた女遊びは、すっかり、彼女への操立てになっていたのだ。
そんな俗物的な感情に、酷く自己嫌悪し、戸惑う内にも、彼女の魅力は、溢れる様に増していく。
ガウリイが彼女を神聖視していても、他の男は違う。不躾な視線で彼女を汚す。ガウリイはそれを牽制し、虫を払っていた。
自然、彼女の側には、ガウリイのみ。
だが、それは、彼女自身が望んだ事ではなく、ガウリイがそう仕向けたからだ。その事に、彼の疚しさは、一層強く彼を苦しめ、男としての自分を抑える原因となった。
≪続く≫