【女の子達の真相】

「あ〜あ、わたし達の苦労て、何だったのよ」
肩までの長さの黒髪の少女は、言って溜め息を吐くが、その表情は、何だか嬉しそうにも見える。
「本当、げんきんよね」
緑色の縦ロールの髪を、ふぁさりと揺らし言った少女は、声も表情も若干の悔しさが。
「あれで、ただの幼馴染みだなんて、信じられないですわ」
背中の中程までの艶やかな黒髪を、さらさらと靡かせた少女は、苦笑を滲ませ。
この3人、ことある毎に、可愛い友人をからかっては、怒りに触れ、怒鳴られたり、軽い暴力を受けたりしていた。
ここ最近、その頻度を、彼女達が、意識して増やしていたのは、可愛い友人の、知る所ではない。
先程、3月振りに会った、彼女の幼馴染みが、遠い地へと行ってしまったのが、始まりであった。
一見すると、変化がない様に見えた彼女であったが、少しだけ、元気が無い様に、3人は感じていたのだ。
それで、元気が出る様に、と、ちょっぴりからかって、彼女の元気を、取り戻していた。
当然、それは一時的なものでしかなく、周りに人が居ない時に、彼女が寂しがっているだろう事は、分かっていた。
役員や、係を引き受け、バイトまで始め、日々を忙しくして過ごしているのだ。
予定がないのが恐いのか、役員・係の仕事、バイトが無い日は、必ず誰かと予定を入れる程、休日や、束の間の休息の時間を取ろうとしない。
3人は、そんな彼女を、放って置けれないし、元気がないのはつまらないのだ。
その、元気をなくす原因が、やっと帰って来た。
「やっぱり、甲斐性を見せて欲しい所よね」
「それはそれで癪だけど。放っておけない事は、事実ね」
「ふふ、そうなったら、学校中大騒ぎですわよね♪」
彼女と、一番付き合いが長い、少女の言葉に、1人は嫌々ながら頷き、1人は楽しんでいるのか、上品に笑う。
ここまで、性格が違うのに、仲が良いのは不思議なもので、学校では、変わったグループだと評判である。
「気付いたんだけどさ……」
あの2人の事で、話を盛り上げていたが、不意に、短い黒髪の少女が、顔を渋らせた。
「へ?突然……て、もしかして、あれって……?」
急な話題展開に、緑の髪の少女が、怪訝な表情を浮かべるが、一転し、引き攣った表情へと変える。
「あら、彼女の胸に、興味を示すなんて、あの方しか考えられないのでは?」
2人が濁した言葉を、聖母の様な笑みで肯定したのは、長い黒髪の少女。
「……幼馴染みのする事じゃないわ」
「そんな人だったなんて……」
「責任を、取って頂かないと、いけないですわよね?」
呆れた顔をした、短い黒髪の少女。
彼女と彼、2人とは、幼稚園の頃からの仲で、彼女の親友でもある。
ショックを隠しきれないのは、緑色の髪の少女。
小学3年の時に、この地へと転校して以来、何かと彼女を敵対視し、絡んではやり返され、を繰り返しているのに、何故かグループの一員に居る。
そして、事態を楽しんで、上品な微笑みを浮かべた少女。
随分ませていたのか、小学一年の頃に、彼に一目惚れし、近付く為に、彼女に接触を図った。それが、今は、彼と彼女の、微妙な関係を楽しんでいるのだから、不思議である。
「そうね、乙女の身体を、穢れさせたのだもの。言い逃れは、許されないわ」
彼女と一番の親友で、曲がった事が大嫌い。正義と愛と真実をモットーとする少女が、片足を階段の手すりに、声と拳を高らかに言う。
それを、素早く物陰に隠れた友人が、生暖かい目で見守るのは、良くある風景である。