ガウリイの&への挑戦【寝顔をのぞく】-リナの挑戦- |
夜も更けるとある宿屋。 その一室で、リナは考えていた。 このままでは不味いと。 「つっても…相手がへたれじゃあ…進展なんか望めないわ。」 リナの相棒で想い人である人物は、人が良いと言うのか、おっとりしているというのか、押しが弱い所がある。 その人物が自分に密かに好意を寄せているのを、リナは知っていた。 が、相手が動くのを待って居たのでは、いつまで経っても進展なんかしない。待っていたら行き遅れてしまう事 が安易に想像出来てしまうリナ。 それならば、行動あるのみだろう、と聡明な彼女は結論付けた。 ベッドに横たえていた身体を起こし、視線を隣のベッドに向ければ、そこには誰も居ない。 運悪く一人部屋が埋まっていて、かつ、唯一二人部屋が一室空いているのみ、という状況であった為、同室する事にした。 相棒は「女の子が軽々しく男との同室を承認したら駄目だ」と父親の様な事を述べ渋り、リナの誠意ある説得で黙らせた筈なのだが、ベッドはもぬけの空。 彼女が預かり知らぬ内に部屋を抜け出た。という訳では無い。その証拠に、慌てず騒がずにリナは宿屋備え付けのスリッパを履き、ベッドから降りた。 相棒が寝る筈であったベッドを回り込むと、でっかい固まりが床に。 宿屋の布団を敷き、自らの携帯毛布を体に巻き付け、音を立てずに寝ている姿は何故か哀愁が漂っている。 ベッドと壁の隙間は狭い。 なので必然的に、リナはスリッパを脱ぎ相棒の上に乗り、這うしか道が無い。 彼女が何でそんな事をしているのか? 同室を観念したかに見えた相棒が、ベッドから降り、ここで寝ようとした所までは良かった。 が、彼は其でも耐えきれなかったのか、おもむろに立ち上がり、部屋を出て行こうとしたのだ。 当然、リナは反対したが、こういう時にだけ彼は折れない。 で、実力行使をした。 相棒を『影縛り』で固まらせ、携帯毛布でぐるぐる巻きにし、床に転がしたのだ。 元々、獣油ランプの明かりでは心もとないという相棒の訴えがあったので、部屋には十分な魔法の明かりがあった。 それを彼の寝転がる上まで移動させ、リナは鮮やかに笑い言った。 「部屋代が無駄になるでしょ?ここで寝なさいv」 と。 つっ!と彼を縛っていたナイフを引き抜き、リナは気付いた。 丁度彼の胸板の上に乗っかっていて、普段遠い彼の顔がいつもより近い所にある。 で、気付いてしまった。 「こんな事で泣く?普通…いい大人がι」 彼の目尻にある一滴の涙。 近いからこそ明かりが消え、薄ぼんやりとした月の光の下でも輝いた涙が見えた。 「……ふむ……」 苦しげな表情で何やらうなされている相棒の顔を、彼の胸板に自分の顎を乗せ、リナは下から覗き込んだ。 「鼻高っ!…ヒゲ発見vやっぱ男ねぇ。」 うんうん唸っている相棒の上で、リナは無邪気に笑い、胸板に耳をあてると、ドクドクと命の音が届いた。 「鈍感……馬鹿男。」 ぽそっと呟き、彼の胸板に手を付き、体を前へと伸ばしたリナ。 彼の顔に影がかかり、さらさらと音を立て、リナの髪が下にある顔に落ちる。 少し思案してから、小さな唇が、大きな顔の目尻に落ちた。 「ま、今日はこれ位で勘弁してあげるわ。覚悟なさい?」 口の端を鮮やかに上げ笑い、リナは再び彼の胸元に頬をあてる。 「明日、どんな顔するかしら。ね?」 ふふvと笑い、彼を巻いている携帯毛布を剥がし、その中に潜る。彼と毛布の暖かさに包まれ、リナはゆっくり と意識を手放した。 |
≪続く≫ |