ガウリイの&への挑戦

【髪に触る】-リナの挑戦1-

バタン!と閉まったドアを見て、リナは苦笑した。
「泣かせちゃったかしら?」
相棒がバタバタと足音を立てて階下へと向かった音を確認し、リナは吹き出した。
「やっぱりへたれねぇ。」
彼が自分の顔を上向きにした時点で、実は目が覚めていたリナ。
何をされるのか?とそのまま寝たフリをしていたが、何かをされるでも無く。可哀想な位動揺していた彼を、 彼女は更に追い詰めるべく自分の体の位置をずらしてみた。
が、予想に反して、否予想通りというのか?
彼はギブアップしたらしく、起きてくれと懇願してきた。
「手温かったわね。」
顎に手を掛けリナは首を振った。彼が聞いたら顔を真っ青にして、首を横に振るであろう。が、彼女はその事 に気付いていないのか、次はどうしようか?と楽しげに考えている。
リナが顔を洗い、身支度を済ませた所で彼が帰ってきた。
幾分落ち着いたのか、さっぱりした表情の相棒は、何事もなかったかの様に荷物をまとめ始めた。
「あたし、先に下行くわね♪」
「へ?ああ。」
荷物を持って、リナが部屋を出ていこうとすると、意表をつかれたのか彼は一瞬戸惑った様だ。
それに気付かないフリをしてリナは部屋を出た。
「警戒されたら意味が無いのよねぇ♪」
トン♪と右手で階段の手摺を叩き、リナは笑う。美貌の相棒が、自分の行動に困惑し、警戒するのは彼女にとって不本意なのだ。気を抜いている相手だからこそ、揺さぶりをかける意味があるのだから。
その後、普段通りの食事を終え、二人は宿を引き払った。
「んっふっふ〜♪お弁当さんvお弁当さんv」
弾む足どりで、リナは街道を行く。
その後を少し遅れてのんびり相棒が歩く。
いつもの光景である。しかし、リナの頭では次はいつ行動するか?と相棒の気配を気にしながら考えている。
昼過ぎ、宿の人に頼み作って貰った弁当を広げ、リナは更に上機嫌を装う。勿論、演技をしなくとも昨夜と今朝 の食事から、味は期待出来る為、半分は本気である。
「くぅ〜!香草の効いたお魚さんがにくいわ〜♪」
魚のフライが挟んであるサンドウィッチを頬張りリナは顔を綻ばせる。
その隣で、
「ステーキサンドも絶品だぞ♪」
もぐもぐと咀嚼しながら彼も幸福そうな顔をする。
横に並んで座っているリナの手が伸び、相棒の腕に添えられた。
「一口頂戴v」
くい!と引っ張り彼の手にあるサンドウィッチを大きく一口食べ、リナは満足そうな顔をし言う。
「う〜vおいしv」
「!!!!」
目を白黒させている彼をよそに、リナは自分の口の端に付いたソースを、指で拭いその指をパクリとくわえ舐め とる。
「な?!!お…お前…」
「ん?何?」
パクパクと口を動かせるが、声が出ていない彼。リナは何も分かっていないフリで首を傾げ無邪気に笑う。
「じ、自分の分があるだろうが!!」
「絶品だぞ、て勧めたの、あんたじゃない。」
ずささっ!と後退しながらの相棒の非難に、リナは呆れた顔で言う。
「そっちのを食べろよ!何でオレの物を!」
「近くにあったからよ。」
顔を真っ赤にして怒鳴る彼に、リナは文句ある?とでも言いたげな顔をする。
2つの弁当は、全く同じ内容で、量も同じ。
リナの弁当にも、ステーキサンドウィッチがしっかり収まっており、相棒の言い分は正しい。
「近くにあるからって、人の物を食べるなよ!」
「何よ?あんただって今朝あたしの大事な大事なエビさん取ったじゃない。」
遠巻きに叫ぶ相棒に、リナは不機嫌そうに言った。
事実だが、その前にリナが彼からウインナーを取った事から始まったいつもの戦争の様な食事での話。つまり、 自分に都合の良い所だけしか言っていない。
が、彼はその事に気付かないで一瞬唸ってから口を開く。
「だが、それとこれとは違うだろ?!オレの手にある物をかじるか?普通!」
「仕方ないわねぇ。そんなに文句言うなら、同じ分だけかじれば?」
自分の分の弁当からステーキサンドウィッチを取り出し、リナは不服そうな顔をする。
普段通りを装いつつ、普段とは違う行動をさりげなく行う。その為には表情は重要だ。リナは、自分らしい仕草 を一瞬の内に弾き出し、表情を作っていた。
「うぇ?!!」
更に顔を赤くさせ動揺をみせる彼を、リナは怪訝な表情で見、首を傾げる。
「いらないの?」
「あ…ああ…。もう良い…」
「変なの。」
肩をすくめてリナは自分のステーキサンドウィッチを頬張る。
脱力した相棒は、のそのそと彼女の隣に戻り、ステーキサンドウィッチを入れ物に戻しフライのサンドウィッチ を頬張る。
「食べないなら頂戴v」
「あ!!」
自分の分をたいらげ、お茶を飲んでいたリナは、入れ物に戻したまま、手が付けられていない、相棒のステーキサンドウィッチを奪い取った。
「う?何よ、食べたかったの?」
はぐはぐと食べながらリナは相棒を見る。
「あ…い、いや…」
「はっきりしないわねぇ。」
最後の一口を口に放り込み、困った顔で頬を掻いている相棒を、リナは不思議そうな顔で見る。
「疲れが抜けてないみたいでな、頭がボーとしてるんだ。」
「んじゃ、ちょっと寝る?あたしも昼寝したいし♪」
苦笑して言った相棒にそう言い、リナはその場に寝転がる。
「そう…だな。」
少し躊躇った後、彼はリナから少し距離を取って寝転がった。
≪続く≫