ガウリイの&への挑戦【好きだと叫ぶ】-ガウリイの挑戦- |
「あ…」 集まった熱が、一気に主張し、それは身体中に一斉に伝わり、ガウリイは慌てて、体を起こし後退せた。 その拍子に金髪は彼女の指から逃れ、腰にサイドテーブルが当たり、もう後ろが無い事を知らせる。 「な…な……」 何か文句を言わなければ、と思うのだが、先の言葉が出て来ない。 呆然と彼女を見れば、掴まれていた髪は、知らぬ内に解放されていたのであろう、その手には無かった。 場違いな事を確認している。そう思うのだが、自然と目がそちらに行ったのだ。 その視線をそろそろと上げると、余裕の笑みの彼女と目が合ってしまった。 「なに…」 自分でも情けないと思う程、情けない声が出て、ガウリイは口を右手で覆う。 言いたかったのは、保護者として、彼女の軽弾みな行動を窘める言葉であったのに。 頭の中がぐるぐると渦を巻き、口にしようとしていたのは、ただの事実確認。 その事実を認識したくなくて、口を塞いだのだが、熱くなった身体の、一番熱を持っている場所が、幻ではなかった事を主張している。 「なにて、あんたがしないから、おやすみのキスしただけよ?」 文句ある?とでも言いたげな表情で彼女。 悔しくて、彼は睨み付けたくなったが、認識したくなかった事実を確定されてしまい、熱が更に主張し、それどころではなかった。 何でこんな事になったのか?どうして彼女は平然としているのか?そもそも具合が悪いんじゃなかったのか?と、色々な困惑が沸いて出て来ると同時に。 もう少しずれていたら。という残念な思い。無防備な彼女に、多少手痛い意趣返しでもしようか?という危険な思考。何馬鹿な事をと、それらを否定する気持ち。 複雑に絡みあった思考に、普段怠けている頭が追い付かず、どれを優先して良いのか分からなくなったのだ。 絡まった思考を解くには、時間と精神力を必要とした。 当たり前だが、その間ガウリイは、険しい表情のまま床を睨み付けるだけ。 その相棒は、といえば何を考えているのか、苦笑を浮かべ彼の頭を見ているのみ。 「なんで…」 彼の口から言葉がやっと出て来たのは、半刻経ってからだった。 「なんで、あんな事…」 「何でだと思う?」 ガウリイが意を決して、細かく揺れる視線を彼女に向ければ、肩を竦めるだけ。 「…そうじゃない。何であんな事をしたんだ?オレは確かに保護者だ。でも、だからと言って無防備すぎるだろ。」 「そう?」 深く呼吸して、やっと保護者としての言葉を言えた彼に、彼女は無邪気な笑顔で首を傾げた。 それは、彼女が、ガウリイを保護者や相棒としてしか認識していないからで、彼の複雑な思考を知らないからであろう。 残酷なまでの無邪気さに、ガウリイは抉られた様な痛みを覚えるが、それを表情として出さずに口を開く。 「オレが言っている意味、分からないか?」 「分かってるわよ?」 「分かってたら、あんな事出来る訳無いだろ。良い加減気付いてくれよ。」 ぎゅうと、右手を拳にし、ガウリイは揺れていた視線を、何とか相棒に固定した。 「何を?」 「女の子なんだ、お前さんは。」 何の動揺も見えない相棒に、挫けそうになりながらも、ガウリイは彼女を諭す言葉で、さりげなく自分の気持ちを匂わせる言葉を伝える。 「当たり前でしょ。」 伝わらなかったらしい事に、ガウリイの感情が爆発し、唸る様な声で言う。 「違う。分かって無い。オレは、保護者じゃなくて、男として、リナの事が好きなんだ。」 ずっと魂が叫び続けていた言葉は、こんな形で伝えるつもりではなかった。 もう少し自信が付いてから、夕日を背に、先を歩く彼女に向かい叫ぶ筈で、追い詰められた状況は、彼に、まるで懺悔でもする様な心境をもたらした。 「ごめんな、迷惑だ。て事は分かっているんだ。だから、もう、あんな不用意な事しないでくれ。」 “好きだ“と言った瞬間、溜め息を吐いたリナに、ガウリイは頭(こうべ)を垂れ言った。 困らせたくなかったが、あれ以上刺激されたく無いという自己防衛で、気持ちを伝えた。 ただそれは、余りにも身勝手で、彼女にとっては迷惑にしかならず、自分はなんて自分勝手なのか、という罪悪感に、ガウリイは胸が苦しくなる。 「すまん、忘れてくれ。明日から、保護者に戻るから。」 「え?」 「すぐには、捨てる事出来ないんだ。それだけ、オレの中でリナは大きいんだ。でも、絶対気持ちは忘れるから。何てたって忘れるのは得意だからな。」 せめて、少しの間だけでも想っていたいという思いさえ迷惑なのだろうか?彼女の不満そうな声と雰囲気に、ガウリイは言い訳じみている。と自分自身で感じた言葉に、苦笑を浮かべ口を開く。 「リナに、好きな奴が出来たら、保護者として祝福するから、だから、傍に居させてくれ。」 |
≪続く≫ |