ガウリイの&への挑戦【好きだと叫ぶ】-リナの挑戦- |
リナが、相棒の警戒心を解くのは簡単で、少し具合が悪い素振りをしただけで、気を緩め自らその手中へと落ちて来る。 その後は簡単だ。目の前にある保護者顔に、最終通告を突きつけるだけ。 本当は、決定的な所にしよう、と思ったが、そう簡単にくれてやるのも悔しい。と思い、少しずれた所に。 脳がついてきていないらしい相棒は、パチクリと瞬きをし、呆然と顔の右半分を手で覆った。 そこに、 「無防備過ぎるんじゃない?自称保護者さん。」 駄目押しの為、鮮やかな笑みで言い、リナは、指に絡めた金髪を、唇に寄せて見せる。 「あ…」 途端、声を漏らし、相棒が体を起こして後退った。 金の髪がリナの手から離れ、相棒の腰にサイドテーブルが当たる。 予想通りの反応に、彼女の顔には笑みが広がった。 「な…な……」 彼の視線がゆっくり上がり、笑んでいる彼女の目と合い、 「なに…」 頼りない声を発したかと思えば、相棒は口を右手で覆った。 何を言いたかったのか分からなかったが、リナは真実を述べる。 「なにて、あんたがしないから、おやすみのキスしただけよ?」 気を抜けば、顔が赤面してしまいそうで、言葉に真実性を与える為、なるべくさらりと言えて、安堵したリナ。 黙ってしまい、険しい表情で床を睨み付ける彼の頭を、苦笑を浮かべ見る。 相手を追い詰めている筈が、自分まで追い込んでいる様な気がしたからだ。 余裕がある様に装ってはいるが、リナの手札は、出し切ってしまった。 ここまで来て、まだ相棒の意識から“保護者“が抜けなかった場合、残す手段は一つのみ。 が、リナには、それを行動に移すつもりは微塵もない。 最悪の可能性は、考えておくべきか?と悩み始めた所に、目の前で悩んでいた相棒が声を発した。 「なんで…」 半刻使ったというのに、リナの行動理由は分からなかったらしい。 「なんで、あんな事…」 「何でだと思う?」 細かく揺れる視線を向けてきた相棒に、リナは肩を竦めてみせる。 答えを与える訳が無い。 気付いて欲しくて、無謀な真似をしているのだから。 「…そうじゃない。何であんな事をしたんだ?オレは確かに保護者だ。でも、だからと言って無防備すぎるだろ。」 「そう?」 深く呼吸して、“保護者“としての言葉を言う相棒。 “保護者“としてなら、合格なのだろう言葉。 それへのリナの答えは、無邪気な笑顔だった。 「オレが言っている意味、分からないか?」 「分かってるわよ?」 「分かってたら、あんな事出来る訳無いだろ。良い加減気付いてくれよ。」 彼の右手が強く拳に、揺れていた視線が定まり、真っ直ぐと向けられ、リナの気分は高揚する。 保護者の仮面を、辛うじて被っているが、相棒の目の奥に、隠しきれない熱を感じたからだ。 「何を?」 「女の子なんだ、お前さんは。」 「当たり前でしょ。」 諭す様に、言われた言葉には、さりげなく何かが含まれている。 が、そんな事で、折れる気が無いリナ。 これだけは、譲れないのだ。 「違う。分かって無い。オレは、保護者じゃなくて、男として、リナの事が好きなんだ。」 唸る様な声だが、やっと。 その思いで、リナは溜め息を吐いた。 一日中掛かったのは、予想外で、手札も必要以上使ってしまい、正直、手詰まりだった為だ。 が、それをどう勘違いしたのか、話は訳の分からない方向へ。 「ごめんな、迷惑だ。て事は分かっているんだ。だから、もう、あんな不用意な事しないでくれ。」 頭(こうべ)を垂れ、苦しげに言われた。 かと思いきや、無理をしている明るい声が続く。 「すまん、忘れてくれ。明日から、保護者に戻るから。」 「え?」 どうしたら。と思う程、ついさっき告白をした口で、“保護者に戻る“と言えるのか? リナは、相棒を信じられ無い思いで見た。 「すぐには、捨てる事出来ないんだ。それだけ、オレの中でリナは大きいんだ。でも、絶対気持ちは忘れるから。何てたって忘れるのは得意だからな。」 苦笑を浮かべ、やけに早口の彼。 なのに、次の瞬間には、泣くのを堪えている表情を上げ、ゆっくりと告げた。 「リナが、好きな奴が出来たら、保護者として祝福するから、だから、傍に居させてくれ。」 ぷちっと音がするのが、リナには聞こえた。 「あんた!本気でそんな事言うの?!!」 「め、迷惑か?」 思わず叫んだリナに、相棒は狼狽える。 が、それは、リナには知った事では無い。 沸点を越えた怒りを、ぶつけるだけだ。 「やっと認めた。と思ったら、忘れろ?!ふざっけんじゃないわよ!!」 相棒との距離を一気に詰め、殴る! 凶器は、ベッドに置いてあった相棒の荷物袋。 中には、そこまで硬い物は入っていないが、色々詰まっているそれは、確かな凶器である。 「何よ、一人で悲劇の人みたいな顔して!!誰が迷惑だって言ったのよ!」 「だ、だって、困ってるじゃないか…それに、今、怒ってるし…」 ぼかすか殴られながら、相棒は酷く怯えた声。 それが、余計リナの逆鱗に。 「はあぁぁ??!人の所為にしてんじゃないわよ!好きだて言われて、嬉しくは思いこそすれ、よっぽど嫌いな奴じゃなきゃ、迷惑だ、とか思う訳無いじゃない!」 「うぇぇ?」 さすがに、体力が続かなくなり、殴るのを止め、リナは荷物袋をドサッと床に置き、意外そうな表情の相棒を見る。 「そりゃ、あんたは良くナンパされてるから?そういうのは迷惑でしょうよ。でも、例えば、アメリアに好きだ。て言われて、あんた迷惑だと思う?」 「え?…ん〜?迷惑、では無い様な?」 「でしょう?!迷惑だろうとか勝手に思ってんじゃないわよ!この馬鹿クラゲ!」 身体の大きい彼の胸元を引っ掴み、リナは目を据わらせる。 「リ、リナ?」 とりあえずだが、目的は達成した。 なら。 顔が赤面してしまうのは、ご愛嬌。 女は度胸だ。 がっしりした肩に腕を伸ばし、首にしがみつく。 左の耳に口を寄せ、 「あたしだって、ガウリイが好きなんだから!!!」 思いっきり叫んでやった。 「んな?!!へ???」 叫んだと同時に、肩を思いっきり押し、離れたリナに、相棒の愕然とした視線が注がれる。 耳が痛むのだろう、左耳を押さえている。 愕然とした表情に、徐々に喜色が広がった。 |
≪続く≫ |