ガウリイの&への挑戦

【自覚させる】-ガウリイとリナの挑戦- 

リナの告白は、ガウリイにとって、思ってもいなかった事で。
胸鞍を掴まれた時も、ただ何かしらの制裁を加えられるもの。と思っていた位だった。
だが、耳の痛みは、現実で、幻でも勘違いでも無い。と理解し、表情がゆっくりと緩むガウリイ。
リナの顔は、朱に染まっており、それは怒りからではなく、恥じらいからなのだろう。
「も、もしかして、りょ、両想いなのか?オレ達。」
「みたいね。」
嬉しさを隠しきれない様子のガウリイに対して、リナはうろんな目付きで声も低い。
嬉し恥ずかしの告白の後にしては、リナの表情は厳しくなっている。
「そうか。そうだったのか。」
それに気付いていないガウリイは、笑み崩れてだらしない表情。
「でも、それも過去の事よね?」
「へ?」
さっきの、厳しい表情はどこへやら。満面の笑顔のリナの言葉に、ガウリイは首を傾げる。
笑っているが、何かを含んだ表情に、妙な引っかかりを感じたのだ。
「だって、保護者に戻るんでしょ?」
「あ、いや、それは…」
「男に、二言は無いわよね?」
「だからだな…」
「あんた、明日から保護者だから。」
ガウリイに有無を言わせず、リナは顔に貼り付けた笑顔のままで。
当然、ガウリイは困惑の渦。
想いが通じ合っている事が、判明したばかりなのに、何故か、リナの“保護者に戻れ“発言だ。
困るな、という方が可笑しい。
「えっと…リナ、あのな?」
「おやすみの挨拶した事だし、部屋戻るわ。それじゃ、おやすみ、ガウリイ♪」
何とか、思い留め様と、口を開いたガウリイだが。
反論を許さない笑顔を返され、続く言葉が無い。
「お、おぅ。」
颯爽と部屋を出て行く、小さな背中を、困った顔で、見守るだけだ。
見守られたリナは、何を思ったのか?
翌日、挙動不審のガウリイがいた。
朝、何時もの通りに、リナの部屋のノック・声掛けが出来ず、彼女が出て来るまで直立不動する事、十数分。
朝食の席では、リナに料理を取られても、反撃どころか、手が止まり。
町を散策する今は、そわそわと落ち着きなく、先を歩くリナに、声を掛けようとして、止めたり、手の平をごしごしとズボンで拭いたり。
背後でゴソゴソしていれば、先を行くリナは気になるってもので。
「何がしたいの?」
呆れた顔と声。今日で何度目か?ガウリイが挙動不審になる度、リナはそれを、ガウリイに向けていた。
「なあ、昨日、オレ、言ったよな?好きだ。て。」
「そうね。で?」
歩きながら、意を決して言ったガウリイに、リナの反応は淡白であった。
「で、リナも、言ってくれたじゃないか。」
「言ったわね。だから?」
「えっと…なら、ほら、あるじゃないか、色々と。」
「ふ〜ん。でも、今日から保護者に戻るんでしょ?自称保護者さん。」
撃沈。
見事、返り討ちされ、ガウリイは一瞬唸る。
想いが通じたのなら、先を望むのは当然で。
想いを伝える前とは、何故か離れて見える距離を、縮めたい。とは思うのだが。
長く”保護者“で居た為に、変にベタベタしたり、甘い言葉を囁くのは気恥ずかしいのと、何か違う気がしていて。
なら、何がしたいのか?と考えると、何も思い付かない。
そもそも、想いが通じる事さえも望みが無い、と思っていたので、その先の事を考える余地が無かったのだ。
勿論、色々と想像してはいたが、そこに至るまでの過程がある筈がなく、只の妄想の域。
それに、リナが何故か、昨日の事が無かったかの様に振る舞っているのもあり、余計にどうしたら良いのか分からないのだ。
まずは、それを何とかしなければならない。
それで、今朝から、ずっと、言おうと思っていた事を、やっと言ってみたら、これだ。
「保護者か、確かに戻る。て言ったけどな、それは、リナを困らせたくなかったからだ。それに、リナを守りたいのには、変わり無いし。」
「んで?」
「親愛じゃない、何よりも大事なものを守る守護者、て意味の保護者になれないか?」
「は……?」
ピキッとリナの足が止まる。
ガウリイも足を止め、装備で固めた小さな背中を静かに眺める。
「戻る。て言ったのはあんたじゃない。」
「そうなんだけど。やっぱり、もう前の保護者には戻れ無い。戻りたく無いんだ。」
「………」
「好きなんだ。で、リナも同じ気持ちなら、戻るなんて出来ない。」
言いたい事を言って、ガウリイはリナを待つ。
判断を下すのは、リナだ。
「手!」
背中を見せたまま、リナが、後ろに右手を向けてきた。
「へ?」
意味が分からないが、ガウリイはとりあえずその手を取る。
と、途端。リナが走り出した。
「リ、リナ?」
「あんた、馬鹿??!こんな町中で!!」
全力疾走のリナの後ろについて、ガウリイはのんびり走る。
暫く走り、二人は誰もいない、どこかの牧場の隅に居た。
肩で息をしているリナ。
と、何故か、走っている途中で楽しくなって、声を上げて笑っていたガウリイは、笑いを引きずっていた。
「何笑ってんのよ!」
「良く分からん、けど、楽しくてな。」
やっと息を整え、叫んだリナの顔は、真っ赤で。
それがまた可笑しくて、ガウリイは肩を震わせ笑う。
「たく、あんな場所で、変な事を口走って!ヘタレの癖に、人前で好きだのなんだの言わないでよね!」
「変な…?ヘタレ?」
リナの言った、不本意な単語に、ガウリイは眉を寄せる。
変な事を言ったつもりも無いし、今まで、”ヘタレ”と誰かに言われた事も無いからだ。
「ヘタレでしょうが!こっちがずっっっと待ってた言葉を言ったと思ったら忘れろよ?!
根性無しにもほどがあるわよ!」
ビシィ!と鋭くガウリイを指差しリナ。
眼差しも鋭く、怒り心頭なのだろう、纏う雰囲気は、おどろおどろしい。
それよりも、ガウリイが気になったのは、”待ってた言葉”という所だ。
彼女は何を待っていたのか?
「待ってた、て何を?」
「あんたの、告白に決まってんでしょうが!」
素直な疑問は、余計に彼女の気に障ったらしい。
青筋立て、眼差しが一層鋭くなる。
「でも、リナ、オレの事、保護者て…」
「あたしは、自称保護者、て呼んでたでしょうが!分かる?自称よ!じ・しょ・う!あたしは、あんたが保護者だ、なんて認めた事は無い!」
弱々しく反論したガウリイだが、リナにそれを一蹴される。
「へ…?認めてなかったのか?」
「当たり前よ!保護者だ。て思っていたのはあんただけ!あんたは、保護者じゃなくて、ただの男だ。て言わせる為と、”保護者”の枷で苦しめたかったから、あれだけの事したのよ?なのに、忘れろですって?冗談じゃないわよ!!」
ガウリイは、完全に意表をつかれた。
リナには、”保護者“と一度も思われていなかったのも、何だか思わせ振りな態度は、態とだったのも、ガウリイには予想していなかった事だ。
どこからどこまでが態とか?は分からないが、リナは、行動してくれていたのだ。
「有り難うな。」
「はあ?!!こっちは怒ってんのよ?!何、それ?」
嬉しさの余り、ガウリイが笑み崩れると、リナは更に頭に血が上ったのか、顔がこれ以上無い程に赤くなる。
倒れるんじゃないか、と思う程赤い顔のリナに、ガウリイは微笑み言う。
「リナが好きだから。リナも同じ気持ちなのが嬉しい。」
≪続く≫

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ガウリイは、両想いなのをリナに自覚させようと画策。
リナは、所詮、”自称”なのよ、てのと、保護者なのは辛いだろ?てのと、ヘタレをガウリイに自覚させたかった。
説明ないと、解りづらいかも(汗)
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