ガウリイの&への挑戦

【嫉妬させる】-ガウリイとリナの挑戦2- 

困ったのか、保護者は眉を下げ、頬をぽりぽりと掻き、
「参ったな…気付かれてたなんてな…」
と、恥ずかしそうに笑った。
「当たり前でしょ?天才美少女魔導士なのよ?それ位、経験あるもの。」
保護者が離れた場所に居る時や、不在の際、浴びる程、では無いが、リナは、熱が籠った視線を、確かに感じる事があった。
それは不快でしか無かったが、それと同じ物を、相棒から受けている。と気付くきっかけになった。
「え……?け、経験…?」
言葉を単純に捉えたのだろう、保護者の顔が険しくなる。
「保護者さんが居ない間に、ナンパされた事ある。て事よ。」
「………で、リナはどうしたんだ?」
「保護者さんには関係無いでしょ?」
ウインクを一つ、強ばった顔をした保護者に送り、リナはデザートへととりかかる。
その真向かいでは、保護者の眉が、寄せられた。
「関係無い事、無いだろ?」
スプーンを手にした手を握られ、リナは眉を跳ね上げる。
大きな手で、リナの手を握った保護者が、彼女に、真剣な眼差しを向けた。
それに、真っ向から受けてたち、リナは睨み付ける。
そこに、更に保護者から言葉を掛けられる。
「なあ、どうしたのか、教えてくれないか?」
「保護者さんは、どう答えて欲しいの?嘘でも良いなら教えてあげない事も無いわよ?」
さして力を入れて無い保護者の手から、自分の手を抜き、リナは微笑む。
「本当の事が知りたいだけだ。」
「それは…」
そこまで言って、リナは黙った。
ウエイトレスが、水が減ったコップに、それを満たしに寄って来たのだ。
深刻そうな様子に、興味を覚えたのであろう、ウエイトレスは、チラチラと二人
を盗み見、去るまでに少し時間を掛けた。
「それは、領域の侵犯だわ。」
深く笑みを作り、リナが言ったのは、ウエイトレスが完全に離れてからであった。
「りょう、いき?」
「保護者さんに、そこまで監視されるのは心外だ、て言っているの。」
言って、アイスクリームを掬うリナ。
「別に、行動を制限しよう。としている訳じゃ無いだろ?ただ、どうしたのか、聞きたいだけじゃないか。」
「それを聞く事も、立派な領域の侵犯よ。自己の行動を、監視されているのと同じじゃない。」
眉を下げ、困った顔の保護者に、リナは笑顔のまま言い放った。
相手が言葉を失い、顔を下へと向けるが、リナは冷たい物を口へと運ぶ。
どうしたのか?など、確認しなくとも、今、こうして彼の前に居る。それがリナの答えなのだ。
それ以上、答える気は、彼女には無い。
それを確認したい。というのは、彼は、自分を、想い人が居るのに付いて行く、軽い女だと思ったのであろうか?
そう思い、リナは奥歯を噛み締めた。
「なら、リナは気にならないのか?オレが、誰かにナンパされた、て言ったら。」
「あんたがナンパされるなんて、珍しい事じゃ無いでしょう?」
もそもそと食べていた頭を上げ、言った彼に、リナは肩を竦める。
その彼の目は、肯定を期待していたのだろう、リナの言葉で、陰りを見せる。
「平気なのか?」
「気にしてたら、キリがないじゃない。」
嘘では無く、本気でリナは言った。
顔が良く、剣の腕もたち、人当たりも良い。とくれば、彼に一目惚れする人間は、後を断た無い。
それを、好ましく思っていない時もあった。どこの誰とも知らない人間と、自分を比べては、落ち込んで、心を乱していた。
平気になったのは、どんな女性の誘いも、彼が断っていたのと、それは仕方がない事だ。と気付いたからだ。
隣に、恋人を連れている女性でさえ、振り返らせる力を、彼は持っているのだ。
惚れるな、という方が無理な話である。
制御出来ない他人の気持ちを気にするより、自分で出来る努力をした方が、精神衛生上良い。
それならば、彼に見合う女性になる努力をしよう。と、リナは決めた。
その成果、なのかは分からないが、彼の心を手に入れた。
「嫉妬したり、しないのか?」
「保護者さんはするの?」
「したら、駄目かよ。」
子供の様に、拗ねた表情をする保護者に、リナは不覚にも、可愛いと思ってしまった。
つい、笑みが溢れ、クスクスと笑ってしまい、余計、彼は拗ねた表情を濃くさせ、口を尖らせ口を開く。
「そんなに、オカシイかよ。」
「ごめん、そんなつもりは無いのよ?」
謝りはするが、笑ったままでは、誠意は伝わら無い。
リナが、小さく笑っている間に、保護者は拗ねた表情のまま、食事を進め、あっという間にたいらげる。
「妬くのが、そんなに変か?」
食後のお茶を一息で飲み干した保護者の顔は、不機嫌そのもの。
笑いが引いたリナは、首を静かに横に振り、口を開く。
「変じゃないし、駄目でも無いわ。妬くかどうかなんて、保護者さんの自由でしょ?」
ウインク一つし、リナは自分の分のお勘定を、無造作に机に置き、立ち上がる。
「これから、グローブ見に行くけど、保護者さんは、どうするの?」
「あのよ、選んじゃ駄目か?」
「へ?」
ぽりぽり頬を掻く相棒を、リナは瞬きし見る。
無言で、伺っている彼は、恥ずかしいのか、視線が、落ち着きなく動いている。
「超一流の剣士さんに見立て貰えるなら、文句なんて無いわ。」
「おう、任せてくれ。」
その瞬間、食堂内の女性達の心を、彼は鷲掴み。ただ微笑んだだけなのだが、その魅力は凄まじい。
その魅力溢れる笑顔を、向けられるのが自分だ、という事は、リナの密かな喜びだ。
先程の、ナンパの話題が効いたのか、町を行く男が、リナを振り向くと、背後の気配が殺気立つ事に気付いたのは、すぐだった。
超が付く一流剣士に、そんな殺気をぶつけられた相手を、少しだけ哀れみ、リナは歩調を早める。
小さな町なので、防具店は直ぐに見付かった。
一つ一つ、手に取り、グローブを吟味している保護者をよそに、リナは店内を見ていた。
余り期待していなかったが、品揃えは良いと言える。埃さえかぶっていなければ、及第点をつけられる店だ。
ぱっと見は綺麗にされている店内だが、細部まで掃除が行き届いていない事を、商品が物語っている。
「そちらのお客さんは、何をお求めですか?」
いくつもの皮の見本を並べていた若い店主が、視線を相棒からリナへと移す。
「ガウリイ、良いのあった?」
その視線を避け、リナは彼の隣に立った。
「あ、お連れ様でしたか。」
途端、残念そうな顔をする若い店主。
同時に入店したが、それぞれ別の物を見始めたので、連れだと思わなかったのか、願望がそう見せたのか、店主である男の目に、諦めの色が見えた。
幸か不幸か、鈍い人物の様で、超一流剣士の殺気が、その瞬間霧散した事も気付いていない。
「これの、一番小さいサイズ、出してくれ。」
「少々お待ちを。」
珍しく愛想の無い声の保護者の言葉に、店主は見るからにガッカリした表情に。
彼が身に着ける物を、と思っていた所、彼が求めたのは、隣に立つ彼女の為の物で、その一連の流れから、二人の関係を予測し、淡い期待が壊された。そんな所であろう。
彼が選んだのは、飛翔竜の尻尾の皮のグローブだった。柔らかく、耐久性も良く、耐魔性もあるそれは、白に近い淡いピンク色。
試しに着けてみると、なめらかな質感の皮は、しっとりと肌に吸い付きそうで、リナの心は決まった。
「耐魔性あるって本当?余り聞かない素材なんだけど?」
眉を寄せ、疑う様な視線を店主に向けたのをきっかけに、リナと店主の攻防戦が始まったのは、言うまでもない。
≪続く≫

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飛翔竜の皮が本当に良い物かどうかは分かりません(笑)スレイヤーズの世界に居るのかも……うふふ☆
ちゃんと調べたいけど…資料が原作しかない(;¬_¬)そして、それをさっぱり読まない(苦笑)
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