ガウリイの&への挑戦【嫉妬させる】-ガウリイとリナの挑戦3- |
値段交渉戦の勝者となったリナは、今夜の宿を求め、道を颯爽と歩き、その後に続く保護者の表情は、何故か険しかった。 「あんたのグローブ、荷物の下に入れちゃったから、後で良い?」 「ん?ああ。」 リナの声で、それを和らげたが、直ぐに、放つ雰囲気が不機嫌なものへ、と変わる保護者。 険しい表情をしている原因を、リナは分かっていた。 グローブが入った紙袋を受け取る際、店主がどさくさに手を握ってきたからだ。 当然ながら、その店主は、リナの魔法で感電後、ガウリイに殴られ、気絶させられた。 程無く見付かった宿に部屋を取り、相棒の部屋へとリナは押し掛けた。 最初、部屋に入ろうとしたリナを、彼は入れようとしなかったが、「何もしないから、安心して。」と、男女が逆転した言葉で、入室を果たした。 そして、窓に張り付く様に距離を取った相棒に、肩を竦めリナはドアに持たれかかる。 小さな町の、小さな宿の一人部屋だが、反対側にいるので、必然的に二人の距離は随分ある。 というのも、昨夜は、彼を追い詰める。という意図があったが、今は、あくまでも、保護者残留となった相棒と、冷静に話をしたいだけなので、下手に距離を縮めても、彼女には何の利益が無いからだ。 その冷静に話したい内容というのは、先程の事であった。 「本気で殴る事ないじゃない。歯が折れたわよ、彼。」 呆れた声だったが、自業自得だと、リナは彼を放置してきているので、同情からの言葉では無い。 ただ、その事で、お尋ね者になったら。どうするのか、という思いからだ。 「嫌なんだ。リナを見られるのも。なのに、あいつ、触りやがった。」 「見るのも駄目なの?」 「ああ。」 拗ねた表情と声の保護者を見、リナは目をパチクリとさせ、 「見るぐらい良いじゃない。」 「何を妄想されるか、分かったもんじゃないだろ?」 この答えに、目を大きくさせた。 “妄想“という単語が、彼程、似合わない人間は居ない。とリナは思っていたからだ。 「保護者さんも、するの?妄想。」 「う……そりゃ、まあ……」 それは、リナにとっては、意外な答えだ。 誰を妄想の対象にしているのか、少しだけリナは気になる。 「どんな妄想するの?」 「どんな……て…」 妄想の内容を聞いてみると、気まずそうにチラチラと、保護者が彼女を見た。 視線の意味は、リナを安心させるものだった。 相棒を、信頼しているが、出会った当初の彼は、発育の良い女性が好みである様な発言をしていたので、少しだけ不安だったのだ。 安堵したので、余裕が出たリナは、からかいを含んだ視線で、見上げた。 「あたし?もしかして、裸とか?」 すると、彼は慌てて首を横に振る。 「ち、違う!それは断じてしてないぞ!」 「どうだか。」 「本当に違うからな?ただ、ちょこっとだけ、リナと良い雰囲気になったらな、とか、それぐらいで……」 胡乱な眼差しに、保護者は、眉を下げ、申し訳なさそうにしている。 が、リナは追及の手を緩める気がない。からかえる時はとことんが、彼女の信条なのだ。 「ふ〜ん?でも、他の男がそれを妄想してるかも。て思ってるから、許せないんでしょ?」 「まあ。」 「つまり、あんたもその過程で妄想してんじゃない?」 「う゛……すまん、ほんのちょっとだけ、妄想した事ある。」 やっと観念した保護者。 ヘタレだ。と思っていたが、やはり男なのだ。と変な感心をし、リナは内心苦笑した。 相棒は、健全な男性なのだ、今更。とすぐに思ったからだ。 未発達だという自覚がある自分の身体を妄想されるのは、恥ずかしいが、相棒にそういう対象として見て貰えていた事は嬉しい。その反面、少しだけ嫌悪もある。 「あんまり、嬉しく無いわね、身体を妄想されるってのは。」 「すまん。」 嫌悪を含んだ声に返ってきた声は、充分反省を感じさせるものだった。 それでも、リナはそれで済まさない。少しだけ懲らしめてやろう、という悪戯心が芽生え、 「本物、見てみる?」 「?!!」 深く笑みを作り、言ってみると、保護者は面白い程、顔を真っ赤にさせ、表情を引き攣らせる。 「保護者でしょ?背中流して貰っても良いわよね?」 「な、に、馬鹿な…」 口ごもった保護者の喉が、ゴクリと鳴ったのを聞き、リナはクスクスと笑う。 「冗談よ。当たり前でしょ。」 「へ?」 「保護者さん、本気にしちゃった?」 にっこり微笑むと、相棒が溜め息を吐いた。 期待を外された残念さからか、安堵からかはリナには分からない。 「お前さん、あんまり馬鹿にしてると、痛い目に合うぞ。」 その声は少し硬質で、保護者の抑えられた怒りを、リナに感じさせた。 だが、相手が、それを実行出来ない。と分かっている彼女には、何の効果もない。 「馬鹿になんかしてないわよ?保護者さんの頑張り次第では、さっきの冗談、本当になる訳だし。」 「!!!」 その瞬間、相棒の喉がヒュッとなり、身体が小さくビクッと跳ね、視線には僅かな熱が籠った。 それに気付いていない振りをし、 「まあ、あんたが只の保護者の内は無理だから、いつの話か、分からないけど。」 わざとらしく肩を竦めて、リナは溜め息を吐いてみせた。 それで気が抜けたのか、保護者の硬直が抜ける。 「頑張るな……て言って良いのか、それ。」 複雑そうな表情をした相棒に、リナは一瞬きょとん。としたが、先程の自分の発言の意味に気付き、あぁ。と納得した。 そういうつもりでは無かったので、内心慌てているが、それを表に出さずに、リナは微笑み、口を開く。 「で、その意味を分かっているあんたは、どう答えるの?」 「興味が無いて言ったら、嘘になる。けど、頑張るのは、それだけが目的じゃない。」 「ふん?まあ、悪くない答えだわ。」 ゾクッとする程、熱が籠った視線を受け、満足そうに笑い、リナは背中をドアから離し、挑発的な視線を向ける。 「保護者さんの頑張り、楽しませて貰うわ。」 「期待じゃないのかよ。」 「ヘタレな保護者さんに期待しても、ガッカリするだけでしょう?」 不服そうな声に、リナは悪戯っぽく笑い、「違う?」と首を傾げてみせる。 「あんまり、余裕っぶってると、足を掬われるぞ。」 「望む所よ。そうねぇ、それなら、保護者さんが見事に、あたしの予想を裏切ってくれたら、あんたのグローブ、返してあげる。」 不満を露にしている保護者に、リナは笑顔を向けた。 その視線の先では、困った表情になった彼。 「え?」 「それまで、預かってるわ。」 「いや、だって、グローブ……」 「そうよね、剣士だものね。無いと困るわよね。」 「それもあるが、リナの新しいグローブが見付かるまで、て……」 「そのつもりだったけど、気が変わったの。その代わり、あたしも、グローブしないから。」 言って、リナが、両手を軽く上げ、ヒラヒラさせると、保護者の眉が下がる。 「リナは、着けていて欲しい。」 「じゃあ、その為に、頑張って。あたしは、あんたが着けるまでしないから。」 「分かった。」 力強く頷いた保護者に、「じゃあね。」と言い、リナは宛てられた部屋へと戻った。 本当は、グローブに施された刺繍がある為、すぐには渡せないのだが、渡せない口実が出来た事に、リナは密かに安堵していた。 想いを込めた刺繍が入ったグローブを渡せば、いくら鈍感な相棒でも、自分の想いの深さに気付かれてしまうからだ。 |
≪続く≫ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ※ガウリイ、挑戦はしているのですよ。伝わりにくいだけです(笑) ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ |