ガウリイの&への挑戦【求婚する】-ガウリイとリナの挑戦2- |
悩んだ末、ガウリイは彼女の部屋の前に立っていた。 一刻半程考え、出した結論だった。 −コンコン 「リナ、良いか?」 『ちょっと待って。』 返事から数秒、ドアがゆっくり開いた。 「何?」 「あのな、頑張って考えたんだ。」 部屋へと招き入れられ、ガウリイは照れ臭そうに笑う。 「そう。で?」 「けど、分からなくてな。」 「主語を言いなさい。何を考えて、何が分からないのよ?」 にへら、と情けなく笑うと、彼女が溜め息混じりの声で、諭す様に言った。 急な話なので、当然で。ガウリイも、それもそうか、と口を開く。 「リナと、一生一緒に居られるには、どうしたら良いんだろうて。でも、リナに認めて貰えるだけの努力、てのがどうしても思い付かなくて、で、それなら、本人に聞こうて。」 恥ずかしさで、早口になってしまうのは、否めなかった。それでも、なんとかゆっくり話そうとしたのだが、常の彼の口調より早かった。 そして、ガウリイにとって、言っている内に、眉をゆっくり寄せた彼女の行動が、不思議に思えたが、 「えぇぇぇと…」 彼女は、こめかみに人差し指を宛て一瞬言い淀み、 「それって、もしかしてプロポーズ?」 と、首を傾げた。 その言葉に、一瞬キョトンとしたが、先程の自分の言葉を思い返すと、 「あれ?そうなのか?」 「なのか?て聞かれても。」 「だよな。」 もっともな返事に、バツが悪くなり、頭を掻いた。 だが、 「オレの、本音だからな。リナの一生を、一緒に生きたいんだ。だから、どんな努力をすれば良いか、教えて欲しい。」 大きく息を吸い、覚悟を決めて言うと、彼女は溜め息を吐いた。 その行動に、ガウリイはあまりの馬鹿さに、呆れられたか。と心配になる。 「馬鹿だとは思ってたけど……それを聞きに来るわ、無意識なプロポーズを言い、それをまた言い直す……天然にも程があるわね。」 その声は、明らかに呆れが籠ったもの。 身体を小さくしようと、肩を縮めるが、元が大きい身体なので、全く意味を成してない事に、彼は気付いていない。 「で?何で、聞こうなんて思ったの?」 「昼間にも言っただろ?只の保護者に戻りたくないんだ。」 ドスッ!と乱暴にベッドに座ったリナに、肩を縮めたまま、ガウリイは小さい声で答えた。 そこに、冷めたリナの声。 「でも、それを最初に言い出したのはそっちだし。保護者でも、側に居られるじゃない。」 「だから、それじゃ嫌なんだ!ちゃんと、リナの伴侶として、隣に立ちたいんだ、オレは。…ちくしょ、恰好悪い……」 勝手に流れた一滴の涙を乱暴に拭い、ガウリイは頭を掻く。 「……たく、馬鹿ね。」 溜め息混じりに苦笑し、リナはベッドから腰を上げた。 「あんたが、恰好悪いのなんて、今更でしょうが。『好きだ』の一言も満足に言えないんだから。」 言いながら、荷物を漁り、 「しかも、あたしにどんな努力をすれば良いか、なんて聞くし。」 「すまん。思い付かなかったんだ。」 顔を下げ、床へと向けたガウリイの顔が、彼女によって持ち上げられた。 「あたしが虐めた気分だわ。」 そっと彼の頬が、柔らかな布で拭かれる。 リナが手に持っていたハンカチが、僅かに残った涙の跡に、宛てられたのだ。 「恰好悪いな……慰められるなんて。」 「見せて。」 顔を反らそうとしたガウリイの顔が、彼女の小さな手によって、留められ、 「ねぇ、ずっと一緒に居たいなら、そういう所、ちゃんと見せて。あんたに無理させて、喜ぶ女だ、て思ってんの?」 真っ直ぐ視線を向けられ、ガウリイは息を飲んだ。 優しさと厳しさが混じった彼女の微笑みに、彼の胸が暖かくなる。 「なんだっけ?悩んでいる姿を、惚れた女に見せるな、て?確かに、一理あるわよ。でも、それを、一生遂げるのは、一緒に居る人間にとって、寧ろ迷惑。それに、信用されてないみたいで、悲しいわ。」 「男は、大事な奴の前では、男らしくドンと構えていたいんだ。取り乱したり、悩んだり、泣いたりなんか、みっともないだろ。」 ハンカチを握っている小さな手を取り、自分の顔から離すと、ガウリイは、ぼそりと言った。 自分が情けない自覚があるので、大きな声で言えないのだ。 「まあ、取り乱されるのは、勘弁ね。けど、悩みを抱えられるのは、嫌。」 「でも、そう言われたし。」 「ねぇ、言葉を履き違えていない?悩んでいる姿を見せるな、て言ったのよね、その人。」 彼女の手が、今度はガウリイの手に添えられた。 払う事は、勿論出来ず、ガウリイはコクコクと頷く。 「あ、ああ。」 「悩みを抱えろ。じゃなくて、一人で悩んでないで、一緒に考えろ。て意味なんじゃないの?そうすれば、悩んでいる姿を見せずに済むわ。」 「え……あれ?」 「ねぇ?あたしは、あんたの悩みを聞かせられない程、頼りない?」 「まさか!頼りないのは、オレだろ?!」 「そうよね。じゃあ、例えば、務め先を首になったとか、重要な事、教えてくれるわよね?」 ブンブンと、首がもげそうな程、ガウリイが頭を振ると、あっさりとリナが頷いた。 それも、何だか情けなく、寂しい気がし、ガウリイは哀願の表情を彼女に向け、口を開く。 「少しは否定してくれ。」 「んな事、良いの。それより、あんたは頭脳労働向かないんだから、考える事はあたしに任せれば良いのよ。」 「そりゃ、リナは頭良いけど。」 「言いたく無い事を言え、て言ってるんじゃない。」 自分の悩み全てを明かす事は、情けなさすぎるだろう。と思い、ガウリイが眉を下げると、リナの手が、彼の頬を挟み、下へと引っ張られ、彼女の視線と彼の視線が合う。 「あたしを、あんたの人生に関わらせて、て言ってるのよ。」 真剣な彼女の視線と声に続き、彼の唇に柔らかな感触。 「へ………」 「これで、あんたはあたしの物よ。」 一瞬の出来事に呆然とするガウリイに、顔を僅かに赤面させたリナが、満足そうに笑った。 「リナの、て……」 「察しが悪いわね。」 だが、彼の、衝撃で呆然とした頭では理解出来ず、彼女はそれに苦笑し、 「答え。」 手に持っていたハンカチの間から、青いグローブを取り出した。 「あたしの隣に立つ権利あげる。その代わり、ちゃんと着いてこないと、置いていくから。」 「これ……」 自分の手に乗せられた、グローブに施されている刺繍に気付き、ガウリイは、グローブから彼女へと視線を向ける。 「まあ、気休め程度だけどね、大事な人を護りたいのは、女だって同じなのよ。」 「大事……に、思ってくれてるのか?」 「無粋な事、聞かないの!」 信じられない気持ちで、自信なさげに、ガウリイが問うと、鼻を彼女に摘ままれる。 「あう……゛」 「で、あんたは、あたしに着いてこれる自信、あるの?」 「意地でも着いてく。」 直ぐに手が離れた鼻を擦り、ガウリイが言うと、リナは「上等。」と満足そうに笑い、 「じゃあ、ちゃんと悩みを話してくれるわよね?」 「ん〜、でもな、オレの悩みって、殆どリナの事なんだ。それをリナに話すってのは……」 確認する様に聞かれて、ガウリイは気まずそうに頬を掻いた。 「なら、ちゃんと隠す!で、あたしにまで影響及ぼす様な重大な悩みは、しっかり話す!良いわね?!」 「はい。」 ビシィッと指を差し、もう片方の手は腰に、強い口調でリナ。 それに、ガウリイはつい背筋を伸ばし、答えてしまった。 「宜しい。」 だが、優しい笑顔のリナを見ると、それも良いか、と思ってしまう彼であった。 |
≪続く≫ |