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【彼の始まり】

ルクミリ出会い編−前−

中学三年の夏。
ルークは夏休みを利用し、自転車で懐かしい地へと向かっていた。
中一の冬、念願の一軒家を手に入れた両親。義務教育中で扶養して貰っている身のルークは、当然付いて行くしか道が無く、住み慣れた地の隣接した街へと移住した。
距離としては、そんなに無い移動だが、移動手段が自転車か、乗り換え二回のバスしかない身には、当然遠い。
それでも、彼は長期休暇中に一回は戻ってきていた。
幼い頃を共に過ごした悪友に会いに。
その度に、悪友の家に泊まり、そこの母親の美味しい手料理を堪能するのが、楽しみであったりする。
中三の夏休み、という事で、今回は勉強会と称して、泊まりに行く途中であった。
「信じらんねぇ」
その道中、寄った公園で、ルークは項垂れていた。
自転車を降り、鍵を掛け、さあ、抜こうとしたら……鍵が無かったのだ。
走行中、担いでいた斜め掛けの鞄の紐が肩から落ち掛け、担ぎ直した際、「ガチャ」と音がしたのは覚えている。鞄が鍵にぶつかっただけだろうとその時は思った。
多分、その時に抜けたのだろう。それに気付かず、鍵を閉めてしまったのだ。
「つうか、抜けるか、普通?!!冗談じゃねぇぞ、おい!」
文句を言っても仕方がないのだが、ルークは毒付く。
鍵を掛けても無いのに、自転車の鍵が抜ける。なんて、誰が思うだろうか?
鍵を壊す事は難しくは無いが、警察と擦れ違えば、即座に引き留められる事は、容易に想像出来る。
愛想が良くない顔をしている。と自分でも良く分かっているし、黙って立っているだけなのに、「怒ってる?」とか「ガン飛ばしてんじゃねぇぞ」とか非常に不本意な事を言われるのだ。恐らく、正直に言っても信じて貰えないだろう。
というか、自分でもそんな話は信じられ無い。
最悪な事に、両親は旅行中。身の潔白を立てるのは、困難。
自転車屋は遠く、最短距離を走る為、バス通りから離れた道で、それ以前に、バス代を持って無い。
「やべぇ……泣きたくなる」
親の方針で、携帯は持っておらず、公衆電話も無い、悪友に連絡を取る事も出来ず、ルークはその場にしゃがみ込む。
徒歩で向かうとして、時間はどれ位掛かるのか?途方に暮れ、ルークは長々とした溜め息を吐いた。
とりあえず、両親が戻ったら、携帯を買って貰おう。と、虚しい決意をし。
愛車を置いて行く事は心残りだが、ルークは立ち上がった。
悪友の家の方が近いし、それしか方法が無いなら、歩くしか無い。
「どうかしましたか?」
溜め息を吐き、行く決意をしたルークの背中に、涼やかな女性の声で、そう声が掛かった。
「あ?」
怒っている訳では無いのだが、ルークは、元々愛想の良い反応が出来ない。いつも通りに、はたから聞いたら、機嫌悪いのか?と勘違いされる声で振り返った。
そこには、銀髪を後頭部で一つに纏めた女性が立っていた。
年の頃は20代前半の、声に合った涼やかな顔の美人が。
「あんた誰だよ?」
「困っている様にお見受けしたので。」
知らない顔に、ルークが眉を吊り上げるが、女性は気にせず冷静な声で返してきた。
普段、先程と同じ事をすれば、相手は機嫌が悪くなるか、意味も無く謝ってくるか、のどちらかなので、珍しい反応である。
「ああ、鍵が無くなってな」
「見つからなかったのですか?」
「走行中に抜けたみたいでな」
「そう」
愛想良く言えず、ルークは頬を掻くが、相手は、やはり気にはしなかった。
そればかりか、簡単な、それでいてとても信じて貰えないであろう話を信じた様だ。
それで、ルークは妙な孤独感から解放された。
為す術がなく、誰の手も借りれない状況であった為、なんとなく孤独感を感じでいたのだ。
「これからどちらに?」
「3丁目だが?」
「そう」
表情が全く動かない相手は、短く言った後、辺りを見渡してから言う。
「少し、待ってて貰えます?」
「あぁ」
銀髪がどこかに消えるのを見送り、ルークは頭を捻る。
「妙な女」
信じ難い話を信じた事も、表情が一貫して動かない事も、そもそも、顔も態度も愛想が良くない自分と平然と接している事も、普通の人ならまず考えられない事で、ルークは彼女の事を、変わった人物だ。と思った。
暫くして、ルークの前に、緑色の丸い車体の軽がやってきて止まった。
運転手はあの女性で、エンジンを切り降りて、再び目の前へと。
「自転車は乗せられ無いので、後で取りに来て下さい」
「ん?」
妙な流れにルークは眉を寄せる。
「近くまで送りますけど、どうですか?」
「は?」
「迷惑ですか?」
「いや、有り難いが……」
流れに着いて行けず、ルークは口篭る。
どう考えても、オカシイだろう。良く知りもしない人間を送るなど。
ましてや、ルークは始終愛想が良く無かったので、印象は悪い筈だし、前述した通りに、人相も良いとは言えない。その人間を、どうして?と思うのは当然だ。
答えを待っている女性に、ルークは口の端を上げ言う。
「俺が言った事、嘘かも知れねぇだろ?何かあったらどうすんだ、あんた?」
「それは、それを見抜け無かった自分自身の責任です」
「ぶっ!!」
やはり、無表情に返され、ルークは吹き出した。
余程、自身の見る目を信じているのか、世間知らずのお嬢様なだけかは知らないが。手助けして貰えるならば、有り難い事だ。
一頻り笑った後、ルークは口を開いた。
「ルーク・ルビーアイだ。世話になる」
「私は、ミリーナ・ダークスターよ」
頭を下げたルークに、ミリーナの涼やかな声が返って来た。
「でだ、ミリーナさんよ、携帯、借りられるか?」
「持っていません」
まさか、そう返されるとは、思っていなかったので、ルークは信じられない思いで彼女を見る。
きょうび、中坊でも携帯を持っているのに。と。
「何か?」
「あ、いや……送って貰うつうのは、さすがに気が引けるんで、知り合いに迎えに来て貰おうと思ったんだが」
ぽりぽりと頭を掻き、ルークは苦く笑う。
異性に興味のある年頃ではあるが、ルークは、妙齢の美人と二人きりという状況は、どうにも妙な感じがして、あまり好ましく無い。
で、最良の策だろうと、聞いてみたらこれだ。
「もし持っていたら、最初からそう提案します」
「あー、まあ、そりゃ、そう…だな」
眉一つ動かさない彼女。
どうにも、彼女は取っつき難く、正論ではあるが、ルークは変わった女性の扱いに困ってしまう。良い人物なのは分かるが、人格は相当変わっている。
「分かった。ミリーナさん、世話して貰って良いか?」
「えぇ」
引き下がりそうも無い彼女に、ルークが折れるが、やはり彼女の表情は変わらない。
「ただ、ちょこっっと待ってくれねぇか?自然の摂理つうか…何と言うのか……」
「つまり、生理現象ですね?」
「まあ、ぶっちゃければ……直ぐに戻るから、すまんな」
言い淀んだ事を直球で言われ、ルークは顔を引き攣らせ、急ぎ足でその場を離れた。
この公園で自転車を止めたのは、そもそも、夏場の炎天下で自転車を漕いでいた為、水分補給をたっぷりしたから。であったのだ。
それが、不幸が振り掛かり、すっかり忘れていたが、またぶり返して来てしまい、ルークは公園にある黒ずんだ元は白い建物であったと思われる所へと入って行った。
「変なのに関わっちまったな」
すっきりし、ルークは手を洗いながら溢した。
ああいうのも、親切の押し売りと呼べるのだろうか?と考えながら、向かうは元の場所へ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ルークの立ち往生理由、あり得ないと思います?あるんですよ!!
走行中に鍵が無くなり、気付かずに鍵を掛けてしまいました。
親を呼び出し、理由を説明しても、鍵を抜いてから、どこかに落とした。
と思われ、理解されないまま………
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