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【ダンジョンクエスト】

−後日−

リナとガウリイは、今夜、キコマ町のそこそこの宿屋に、部屋を取っていた。
夜が更けた頃、不意に部屋のベッドの固まりが、身じろぎをした。
「・・・。」
ゆっくりと、身を起こした影が、窓の方へと顔を向けられ、
幼さが大分抜けてきたその顔が、月明かりに照らされる。
「ルーク・・・あんたは、やっぱり選んだのね。」
先程夢に見た、数ヶ月前の出来事を思い、その部屋に泊まっているリナは、語り掛ける様に、口を開いた。
「そうね、あたしも、同罪だわ。責める事は出来ない。幸運で捨てずに済んだ、それだけだわ。」
痛む胸に手を添え、リナは顔を歪ませる。
―コン
暫し経ち、部屋のドアが控え目に叩かれた。
『リナ・・・今、いいか?』
小さな、リナにギリギリ届く声は、彼女には耳慣れた物だった。
暫しリナが無言でいると、再びドアがノックされる。
―コンコン
『リナ、起きてるんだろ?』
確信めいた声に、リナは溜め息をつき、ベッドを降り、スリッパに足を入れる。
程無くして、来訪者はその部屋へと招き入れられた。
「いつだったか・・・約束しただろ?一緒に、どうだ?」
「今、何時だと思っているのよ。大体、今更な話だわ。」
窓から入る月明かりに、長い金髪を輝かせる相棒にジト目を送るリナ。
「そう・・・なんだがな。」
酒の瓶とグラスをサイドテーブルに置き、ガウリイは曖昧に笑う。
「・・・なんか、あった?」
「ん?」
「どうしたのよ、らしくも無い。暗い顔して・・・?!」
急に大きな腕に引き込まれ、リナは体を硬直させるが、すぐに気を取り直し、文句を口にする。
「なんなのよ?!いきなり!離しなさいよね!」
「・・・夢、見たんだ。」
「は?そりゃ、見るでしょうが、いいから、離してよね。」
自分の髪に顔を埋め、自分を大事そうに抱え込んだガウリイに、リナは溜め息混じりに、そう言う。
「ミリーナが、出てきた。」
「?!」
「リナとルーク、オレとミリーナで、別々になった事、有っただろ、そん時の事をな。」
弾かれた様に顔を上げたリナと、目を合わせて、ガウリイは力無く笑う。
「・・・で?」
「ん?まあ・・・それでな、リナに会いたくなっちまった。」
「そ・・・」
「しばらく、このままで良いか?」
「嫌、つっても離さないでしょうが、馬鹿力。」
コテンと頭をガウリイの胸板に預けるリナ、密かにその右手が、彼の寝間着を握っている。
「あん時、お前さんら相変わらずケンカしてたよな。」
「ルークが大人げなかっただけよ。」
「あいつら、会えたかな。」
「ミリーナが会わないかもよ。」
「そうだな、苦労しそうだな。向こうでも・・・」
「ね、ミリーナは夢の中で、なんて?」
「ん〜、忘れた。」
「クラゲ・・・」
「リナは、何で起きてたんだ?まだ、気にしてるのか?」
「ちょっと起きただけよ。」
「そっか・・・」
「ねえ、もういいでしょ?」
「ん?」
「お酒、呑むんでしょ。」
「ああ、そうだったな。」
名残惜しそうに、ガウリイは腕からリナを解放する。
「これ、どんなお酒?」
「リンゴを使ってある、て聞いたが?」
逃げる様に、テーブルにある瓶を手にしたリナを見て、ガウリイは穏やかに笑う。
「じゃあ、あんたの口に合わないんじゃない?」
「ま、たまには・・・な。」
「ふ〜ん。」
適当に相槌を打ち、リナは瓶の蓋をキュポン、と開ける。
「いい匂い。」
「ちょっと、甘そうだな・・・」
注がれた酒の匂いに、リナは微笑み、ガウリイは苦く笑みを浮かべた。
「何よ、今更・・・」
「ま、リナには丁度いいかもな。」
溜め息混じりのリナの言葉に、ガウリイは無器用にウインクをして、立ったままグラスを手にして、傾ける。
リナは窓枠に腰掛け、グラスを両手で包み込み、舐めるように酒を呑む。
暫く、他愛のない話をしながら、2人は酒を楽しんみ、ゆっくり時間が過ぎて行く。
「ミリーナにな、後悔しないで、て言われた。」
最後の一杯を傾けながら、ガウリイは切り出した。
「そ。」
少しだけ、酔いで頬を赤く染めて、リナは関心なさそうに酒を舐める。
「ルークの事を、まだお前さんが、気に病んでいるのは、知っている。それを乗り越えるのは、簡単じゃないと思う。」
「・・・」
「少しは、オレを頼ってくれよ?」
「ま、考えとく。」
「素直じゃないなぁ。」
苦笑して、ガウリイは済ました顔をしたリナを抱え込む。
「な〜によ、また〜」
「大事なんだ、リナが、だから・・・無茶をしないでくれよ。」
「ガウリイ?」
酔いの為か、今一状況を把握出来ていないリナは、ガウリイの腕の中、首を傾げる。
「いつか、オレと、人生を共に歩いてくれないか?」
「?!―へ?」
「・・・どうだ?」
「・・・ん。考えとく。」
「そっか・・・」
頬を真っ赤に染めたリナの言葉に、ガウリイはゆったりと笑った。
「じゃあ、部屋に戻るな。」
「ん、おやすみ。」
「ああ、ゆっくり休めよ?」
そう言って、リナの額に口付けを落とし、ガウリイはグラスと瓶を手にして、部屋を出ていった。