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【ダンジョンクエスト】

−完−

日が暮れる前に、取って置いた宿屋へと、戻る事が出来たリナとガウリイ。
リナが早速風呂場へと向かったのは、言うまでもない。
そして、夕飯でお食事バトルが行われたのは、いつもの事。
―カタン
1人、宿屋の酒場で、グラスを傾けていたガウリイの向かいの席に、リナが座る。
小さな村の宿屋なので、夜には食堂が酒場になっているものの、2人以外、客は数人しかいない。
「お疲れさん。」
「ん・・・お疲れ。」
「残念だったな、何も出て来んくって。」
「うん。あの遺跡そのものは、すごいんだけどねぇ。魔法でどうにもなんないし・・・」
「ま、良く有る事だな。」
「それは、言うな・・・無駄足だったわ。」
ガウリイの言葉に、リナはテーブルに突っ伏す。
「ジュース、貰ってくる。これと割って飲むだろ?」
「あ〜、うん。」
酒ビンを指差し言ったガウリイに、リナは顔を上げ頷く。
それを見て、ガウリイは席を立ち、カウンターへと向かった。
「なあ、一緒に呑まね?」
「そうそう、い〜とこ知ってんだ〜。」
1人で居るリナを、酒場に入って来た2人の傭兵姿をした男が、目を付けて、声を掛けて来た。
それに、リナは無言で2人の背後を指差す。
と、同時に、
「悪いが、よそでやってくれ。」
ガウリイが低い声を掛ける。
「あ〜?あんたには用はねえよ。」
「そうそう、外見だけの王子様より、俺らの方が、彼女を楽しませてあげられる・・・てなもんだ。」
「・・・?!よせ!」
振り返りいちゃもん付ける2人の男と、愕然と声を挙げるガウリイ。
―ドカ!ドス!
「あ〜、すっきりした〜」
「おまいは〜」
2人の男の後ろ頭と背中に椅子で殴り付け、爽やかな顔をしたリナを、ガウリイは呆れた顔で見る。
「席、変えましょ。これじゃ、落ち着かないじゃない?」
「あ、ああ・・・」
転がっている男をとどめとばかりに踏み付け言ったリナに、ガウリイは頷くしかなかった。
そして、リナがカウンターの壁際に腰を降ろすと、ガウリイはその前に、ジュースで割った酒を置き、彼女の右隣へと腰を降ろす。
「あのな、ああいう場面では、男のオレに任せろよ。逆恨みされたら、どうする。」
「ふん!ロクでもない顔して、目の前の相手の技量も測れない奴らが、あたしにコナ掛けるだなんて1万年早いのよ。」
困った顔をして笑うガウリイを見て、リナはつん!と顔を背ける。
「でもなあ、ああいう輩は逆上すると、何しでかすか分かんねえだろ〜?」
「平気よ。」
「今、魔法使えないんだろうが・・・」
「で?」
「いや、で?て聞かれてもなあ・・・」
リナから返ってきたそっけない言葉に、ガウリイは更に困った顔をする。
「何で、そこまで心配すんのよ。」
「何で、て・・・お前さん純粋な力勝負には不利だろうが・・・」
「あら、自称保護者さんが、すぐそこに居たじゃない?」
「ぐっ?!げほっごほっ?!ごほっ・・・」
「どしたの?器官に酒でも入ったの?」
言ってウインク一つした途端、むせたガウリイをリナは不思議そうに見る。
「あ゛・・・ああ。」
「たく、馬鹿ねえ。それとも、もう年なのかしら?年寄りは器官に入り易い、て聞いた事があるけど。」
「ん゛なんじゃない・・・」
「あっそ?ん、おいし・・・あたし好みの割合じゃない。」
「まあ、付き合い長いしな。それ一杯だけだぞ?」
「え〜〜〜。」
「オレも、今日はこれ一本にするからよ、な?」
「う゛ーー。分かったわよ。この過保護。」
「まあ、今度調子の良い時に2人でゆっくり飲もうぜ。」
「よっしゃー!なら、あんたを酔い潰してみようかしら?」
「無理じゃねえか?オレの財布が空になる方が、先だぜ。」
「これだからザルは嫌だわ。」
「・・・なあ、ちなみに、さっきのコナを掛ける条件さ・・・」
深く溜め息をついたリナに、ガウリイは何でも無い振りをして切り出した。
「うん?」
「ロクでもない顔じゃなくて、腕が立てば・・・いいのか?」
「へ?まあ、最低条件としてね。あとは話していて楽しいかとか・・」
ガウリイの問いに、リナは小首を傾げ答える。
「リナは、オレとしゃべっていてつまらんか?」
「それはないけど?まあ、疲れる時はあるけどね?」
「でさ、オレ、剣の腕は悪くはないだろ?」
「その代わり、頭は空っきしだわね。」
「自分で言うのもなんだが、ヘタな顔はしていないだろ?」
「あんたがヘタな顔だったら世の男の大半は死ぬわよ・・・」
自分のイヤミに動じなかった男を見やり、リナは溜め息をつく。
「そっかあ、じゃあ、チャンスはある、て訳だ。」
「―・・・はあ?!」
「ん?どうした?」
暫し固まり素沌狂な声を発したリナに、ガウリイはノホホンと笑う。
「ち・・・ちゃんす、て、どういう?」
「ん?さあな、リナ、お前さんはどう、思うんだ?」
「へ?・・・さ、さあ?」
ほんわかと問い返され、リナは赤い顔のまま、首を捻る。
「酒、終っちまったな。さ、部屋に戻ろうぜ。」
リナの髪を、いつもの様にくしゃ!と撫でて、ガウリイは立ち上がる。
「・・・髪が痛むでしょうが。」
暫し呆気に取られてから、リナは自分の髪を整えて立ち上がり、急ぐ様に、自分の部屋へと、戻る。
ガウリイは、その後をのんびりと追い、リナが部屋に入ったのを確認して、部屋へと入った。
残念ながらその夜、リナはガウリイの例の言葉を、達の悪い冗談だと、決めこんだようである。
―――――ルクミリサイド―――――
ミリーナとルークが、取って置いた宿屋へと戻ったのは、もうすぐ日が沈むかどうか、といった頃合いだった。
やはり、ルークはすぐに風呂場へと向かった。
そして、軽く体を洗い、急いで宿がやっている食堂へと足を踏み入れる。
村唯一の食堂らしく、そこは、それなりに込み合っていた。
すぐに、ミリーナを視界に捕え、ルークはほっ、と胸をなで降ろす。
そこには、カウンター席で1人、グラスを傾けていたミリーナがいた。
美人の枠に軽く入る彼女を、他の男が放って置くのは不思議ではあったが、大事な彼女がそこらの男共にナンパされるのは気に入らない、と思い至りルークは苦く笑い、足をそちらへと向ける。
「ルーク、お疲れ様。」
「お、おう。」
ミリーナがルークに気付き、振り返ると、ルークは頬を掻く。
「座ったら?」
「ああ、ミリーナはもう食ったのか?」
言いながら、ルークはミリーナの左隣へと腰掛ける。
それと、同時にミリーナはカウンターの方へと顔を戻した。
「今、待っている所よ。」
「そうか。おやじ、俺にはすぐに出せる物をくれ。」
店の主にそう言い、ルークは隣を見る。
その凛とした顔が、いきなり彼の方を見る。
「リナさんから、聞いたわ。あなた、ちゃんと協力してた様ね。」
「そりゃ、まあ・・・な。その方が早いしな。」
「そう・・。」
居心地悪そうに答えたルークから、顔を背け、ミリーナはカウンターの奥を見る。
「はいよ。カミさん自慢の子羊の煮込みだ、口に合えばいいがな。こっちの美人さんは、香草焼きだ。ゆっくりしていってくれ。」
2人の前にそれぞれ料理を置き、店の主は直ぐに厨房へと向かう。
2人は、今後の予定を簡単に話し、その後は食事に専念した。
そして、夜が更け始めた頃、ミリーナがルークの部屋を訪ねた。
「今日の労いよ。」
「ああ?」
珍しい来訪に、ルークは面食らう。
そのミリーナの手には、地酒の瓶が一本とグラスが一つ。
「いらないの?」
「いや!そんな事ない!一緒に・・・どうだ?」
「何故?」
「1人じゃ、味気無い気がするんだが・・・?」
「・・・分かったわ。なら、一杯だけ、付き合うわ。部屋のグラス、まだ使っていないの?」
「あ、ああ。後でもらえばいいだろ。さ、入ってくれ。」
ミリーナの言葉に、ルークは照れた様に鼻を掻き、彼女を部屋へと招き入れる。
ミリーナは、部屋に備え付けの椅子に座り、ルークは、瓶とグラスを小さなテーブルの上へと置いた。
二つのグラスに酒を注ぎ、ルークは一つをミリーナに渡し、窓枠に背を預ける。
「リナさんを突き飛ばしたらしいわね?」
「う゛・・・いや、まあ、そりゃ、何て言うか・・・」
静かなミリーナの言葉に、ルークは視線を泳がせる。
「それで、かすり傷で済んだ、とも聞いたわ。」
「あ゛〜、まあ・・・な。あいつに怪我させると、連れがうるさいだろ。それでだ。」
「何も言わずに、治したそうね。」
「あの、細っこい体から血が出てたら、ほっとけねえだろ。」
「そう・・・ルーク。」
「?」
「本当にお疲れ様。」
そう言ってミリーナは、微笑する。
「う゛・・・た・対した事じゃ〜ねえ!ただのガキの子守りだ!」
「本当は、分かっているのよね、リナさんがすごい人だ、てのは。」
「だ、だから・・だな・・」
見詰め続けてくるミリーナから、顔を背けるものの、ルークはちらちらそちらを見る。
「はい?」
「ああ、分かってるよ。魔族を平気で口で負かせるわ、とんでもない呪文は使うしよ。」
「ええ。」
「頭の回転は、まあまあ良い。だけどよ、中身はまだまだガキだ。」
「あなた、リナさんと口喧嘩してたわよね。あなたも、十分子供よ。」
「い゛?!う、悪い、つい、な。まあ、沌でもないガキだけど・・・よ。」
そう言って、ルークは遠い目をする。
「何かあったの?」
「いや、何でもねえ。ただ、あの2人意味の無い化かし合いしてんな、と思ってな。」
「?そうね、気付いても、良さそうなのに、それじゃ、戻るわ。一杯空けたので。」
ルークの態度に何か気付いたのか、深くは聞かず、ミリーナはそう言い、グラスを手にして、立ち上がる。
「ミリーナ!一つ・・・いいか?」
「ええ?」
部屋を今、正に出ようとしたミリーナはルークの言葉に、顔だけを向ける。
「迷惑じゃ、ない、よな?」
「だったら、一緒に居ないわ。じゃ、おやすみなさい。」
「あ、ああ。おやすみミリーナ。」
無表情で答えたミリーナに、ルークは最高の笑顔を送った。
この後、ミリーナがどう考え、どの様な結果に突き当たったかは、2人だけが知っている。
≪完≫