【ダンジョンクエスト】−5− |
「おい・・・無事か?!」 「まあね、そっちは?」 「けっ!テメーに心配される様じゃあ、終りだな。」 リナから返ってきた声に、ルークはぶっきらぼうにそう言い、立ち上がる。 それと同時に体についた土や石・砂などがパラパラと落ちた。 「・・・天然の罠は、さすがに避けられんかったな。」 「今まで無事だったのが不思議だわね。」 崩落した天井を睨み付け言ったルークに、土砂の山の向こうから現れたリナが応える。 「また、落ちてこねぇとも限らねぇ。少し急ぐか。」 「そうね。」 「ん?手・・・貸せ。」 「何?びびって足でも動かないの?」 「はっ?アホ抜かせ!」 からかいじみた声を発したリナの左手を強引に引っ掴み、ルークは呪文を唱える。 『治癒』 力ある言葉と共に、リナの左腕にあったかすり傷が塞がった。 「・・・これくらい、自分で治せたのに。」 「じゃあ、なんでほっといた?あんたの都合とやらで魔法が使えなかったんだろ?あんたに傷を作らせると、後であのバカ男に怨まれるんでな。それはゴメン被りたい。」 眉を寄せたリナの左腕を放し、ルークは片眉をつり上げそう言い、歩き出す。 「・・・変な所で、デリカシーはある訳だ。」 感心した様に小声で呟き、リナも歩き出した。 ――――――― 「さっきの音、近いな。」 「どこかが崩れた様ですね。」 ガウリイの呟きに、ミリーナが頷く。 「多分、そっちに居るな。」 「勘・・・ですか?」 「ああ。」 「なら、信用出来ますね。リナさんが信じている物ですから。」 「そんな大層な物じゃないんだけどな。」 「では、リナさんを疑え・・・と?」 「いや・・・ミリーナには敵わんな。」 「それ程でも・・・」 ガウリイの勘を頼りにした足取りに、ミリーナは静かに付いて行く。 ――――――― 「・・・ルーク、あんたってムカつくけど、良い奴ね。」 「あ〜?!喧嘩売ってんのか、テメー?」 リナの言葉に、ルークは片眉をつり上げ、睨み付ける。 「あら、ホメてんのよ?喜んだらどうなの?」 「どこが、どう褒めてんだ、あ゛?!」 「良い奴ね、て言って挙げたじゃないの。」 「言って挙げたって、んな恩着せがましく、しかも、その前にムカつく・・・なんて聞こえたんだが?」 「うん、ムカつくのはムカつく。」 「ほおう、偶然だな。俺もあんたの事ムカつくガキだと思ってたぜ?」 「へえ?あたしは、うざい男、て思ってたけど〜?」 「ふうん、俺はくそ生意気なガキだと思ってたがな〜ぁ?」 「んっんっんっ、トレジャーハンターとか言って、実の所ミリーナのお尻追っかけているだけの男が何言ってくれちゃってんのかな〜?」 「おうおう、言ってくれるじゃねえか。そっちこそ、大人同伴で行動しているだけの、ただのチビガキだろうが。」 「ふっふ〜んだ!残念でしたね?あたしの方が稼ぎがいいのよ!」 「どうせ、どっかからパチってきてるだけだろうが?!」 「あんただって、似たようなもんでしょうが!ガウリイは欲が無さ過ぎるから、こっちがその分稼いでいるだけよ!」 「にしても、ガメついだろうが!」 「あ〜ら、人間貪欲じゃなきゃ、人生楽しく明るく生きられ無いじゃない?」 「ほっほおう、じゃああれか、あたしが稼いであげるから、何の心配もないのよ。とか言って、あのノーテンキ頭の男を飼い慣らした、て訳だ。そりゃ、さぞかし楽しく明るい人生なんだろうな?!」 「だ〜か〜ら、言ったでしょうが!あいつが離れたいなら、止める気は無いって、そっちこそ、どうなのよ?一緒に行動してるから、稼ぎは変わらない。ミリーナがあんたと居て、何のメリットがあるって〜の?!」 「俺の猛烈な、ラブラブパワーを注いでいりゃ問題ない!」 「はあ?!そういう問題じゃないでしょうが!」 知らぬ間に足を止め、ルークとリナは対峙する。 「何だ、やるか?チビガキ。」 「言葉で勝てないからって、暴力に訴える気?男の風上にも置けないわね?」 「誰がんな事言った、この破壊大魔王!」 「はっ?!そっちがその気になったんじゃなかったの?陰険男!」 「やかましー!平原みたいな胸しやがって、ちった〜ぁ肉つけろ!」 「そっちこそ、そのツリ目なんとかなんないの?!手配書の見本が歩いているみたいよ?!」 「大体、あの大量な食事どこに消えやがる。この大食漢!」 「ふっ!仕方無いでしょ。この天才美少女魔導士のキャパシティーを維持するには必要なだけよ!あんたには到底理解出来ないでしょうけどね?!大体、男だったらもっと食べなさいよね、もやしっ子じゃあるまいし!」 「けっ!俺はちゃ〜んと自分の体を維持するだけは喰ってんぜ。栄養がどこ行ってんだか分からんデカブツや、胸に栄養の行って無い嬢ちゃんと違って、ちゃ〜んと血となり肉となってんだよ。」 「その分、頭に巡ってないじゃない。単細胞男!」 ルークとリナの間には、すさまじいまでの火花が散っていた。 そこに、 「・・・ルーク、身体的な事を言うのは、同じ女として感心しないわ。」 「こんな所まで、ケンカせんでもいいだろうが・・・お前さんら。」 角を曲がって現れた2人は、イガミ合う2人と距離を置き、足を止めた。 勿論、軽蔑な眼差しを送るミリーナと、呆れ顔のガウリイだ。 「ミリーナ☆」 「あ〜、やっほ〜!」 顔を輝かせたルークとは対照的に、リナは片手を挙げ、2人に近寄る。 「リナさん、無事でしたか?少し汚れている様ですが・・・」 「あ〜あ〜、何で頭に土被ってんだ?お前さん。」 ミリーナとガウリイは、揃ってリナの髪に付いている砂埃や土を払う。 「ミリ〜ナ〜。」 「ルーク、男なんだから、リナさんをちゃんと守ったらどうなの?女の子なのに、こんなに汚れて・・・」 「ミリ〜ナ〜。」 「リナさん、ハンカチ使って下さい。お顔が汚れていますよ?」 すがる様な顔をしたルークを無視して、ミリーナはリナの服や体に付いた埃を払う。 「ち・・・ちょっと、自分で出来るわよ・・・」 「いいから、じっとしててくれよ。自慢の髪なんだろう?」 顔を赤らめ抗議したリナの頭を撫で、ガウリイは彼女の髪を丁寧にすく。 「なんだよ、なんだよ、2人して、どうせ俺は・・・」 「ルーク、お疲れ様。2人とも怪我がなくって良かったわ。」 「ミリーナ〜V」 ミリーナの言葉にいじけていたルークが、ぱっ!と表情を明るくするが、 「リナさんはともかく、ルークを運ぶのは大変だもの。」 「ミリ〜ナ〜。」 しれっとした顔で言ったミリーナに、ルークは哀願する様な視線を送った。 |
≪続く≫ |