【ダンジョンクエスト】−6− |
遺跡を出て、4人は人の手が入っていない道を抜け、山道を歩いていた。 先を歩くのは、リナとミリーナ、その後を少し遅れて、ガウリイとルークが並んで、話をし出す。 「ルーク、リナが世話になったな。」 「へっ、あんたよくあんな跳ねっ反りと一緒に居んな。俺はあいつとだけは組みたくはないぜ。」 爽やかに笑ったガウリイを軽く睨み付けるルーク。 それに、ガウリイは苦笑で返す。 「そりゃそうだ。あいつに付き合えるのは、オレだけで十分だ。」 「はっ。言ってくれるねぇ。あんたももう選んだクチか?」 「『選ぶ』とかじゃないな。それ以外ないんだ。ルークは選んだのか?」 「は?あ、ああ、本気で知らないんだな。あんた。」 ガウリイの問いに面喰らい、ルークは視線を外す。 「何を?」 「いや、こっちの話だ。で、相変わらず、名前の分かんねえ剣なんだな。」 「ああ?結構使えるぞ。」 ルークの言葉に、ガウリイは首を傾げてから、腰に佩いた剣に右手を置く。 「ふ〜ん。しっかし、久々に会ったと思えば、相も変わらずクソ生意気だよな。あんたの連れ。」 「ルークこそ、相変わらずミリーナに冷たくされてたよな。」 「うぐっ?!やっべ〜ぇ、おい、どうするよ俺?このノーテンキバカ男に大ダメージ喰らわされちまったよ。人としてどうよ?終っちまった・・・短い人生だったぜ。」 「おいおい。」 項垂れるルークに、ガウリイはジト目を送る。 が、ルークはすぐに立ち直り、口を開く。 「にしても、てっきり再会の包容があるかと思いきや、やけにあっさりしたもんだったよな。あんた。」 「まあ、取り立てて嫌な気配はしなかったしな。」 「心配じゃなかったのか?」 「ああ。」 「ふ〜ん、『あの日』でも・・・か?」 「何で知ってるんだ?」 「て、知ってたのかよ。それでも心配しないって、一応男だぞ俺は。」 「あいつも場数を踏んでる。剣も使える戦士でもある。それに何より、ルークお前さんはミリーナに顔向け出来なくなる様な事はしないだろう?」 「〜゛けっ!随分信頼してくれている様だけどな、いっとくが、見捨てなかったんじゃない。あいつが使えるから一緒に行動しただけだ。あれがただの小娘ならさっさと放り出していたぜ?!」 「何だ、好きだ好きだ、て平気で言うくせに意外と照れ屋なんだな。」 「んな゛?!ば、ばか言うなよな!俺はいつだって、ストレート勝負しかしねえって〜の!」 ガウリイの言葉に、赤い顔を更に赤くして、ルークはそっぽを向く。 「で、何でリナが『あの日』だって知っているんだ?」 「ん?ああ、あの魔法ヲタクが全然使わなかったからな。別々になってすぐに、岩をなんとかしようと、魔法で調べている俺の横で、1人ペタペタ岩に触っているだけだったし、呪文が飛んでこなかったからな。」 真面目な顔をしたガウリイに、ルークは鼻を掻き答える。 ――――― 「くはー、無駄に疲れたわね。」 「ええ、何も見付からなかったですからね。」 リナの愚痴にミリーナは頷く。 「エルフの残した遺産、て聞いて期待してたのに・・・」 「せめて、魔石の加工の仕方のヒントがあれば、その技術を売る事が出来たんですけどね。」 「そっちは、どこで知ったの?」 「私達は、フェイセル村で、この辺りに昔エルフが居た、と知り、それで調べた結果です。リナさんは?」 「あたしは、カントナ村で、昔エルフが、ここからその村近くに流れた、て聞いてね。そっちにめぼしい物がなかったから、それで、こっちに来た、て訳。」 「フェイセルとカントナ、丁度この山を一つ挟んだ土地ね。この辺りでは有名な話の様ですね。」 「かー!あっの頑固じじぃ!勿体ぶったあげくに、これかい?!絞める・・・次にあったら絞めてやる。」 「では、指名手配犯になったら、責任持って追い詰めますね。」 「じ、冗談よ。やあねえ、ミリーナったら。」 「私もです。」 冷や汗を流したリナに、ミリーナは涼しい顔をする。 「・・・。」 「所で、ルークは迷惑をかけませんでしたか?」 「え?ん〜、まあ、相変わらずムカつく事言ってきたけど・・・」 ミリーナの問いに、脱力していたリナは顔を上げた。その表情は、苦笑とも、嫌悪ともつかない、微妙なもの。 「見付けた時も、2人で言い争ってましたしね。」 「でも、まあ、概ね役には立ったわ。トレジャーハンターて言うだけあって、罠を見破るのは上手かったし、調べ物出来るでしょ?あいつだと調べるのは出来ないじゃない。脱出するのに倍は掛るわね絶対。で、あいつ、どうだった?」 「勘が働く方なので、助かりましたよ。裏口を見付けたのも、そのお陰です。」 「そ?役に立ったの、さすが感覚だけで生きてるだけあるわね☆」 「おかしな話ですね。」 「へ?何が?」 「お互い、連れが迷惑掛けていないか心配するなんて・・・」 「あ゛〜、連れの欠点をよく知っているからでしょ。」 そう言うと、2人は目を合わせる。 ――――― 「ミリーナv」 先を歩いていたミリーナが立ち止まった事に気付き、ルークは駆け寄る。 「ガウリイさんと話したいから、代わりましょ。」 「へ・・・?」 「では、そういう事で。」 踵を返し、ミリーナは颯爽とガウリイの方へと歩く。 「フラレちゃったわね?ルーク。」 鼻で笑い、リナが哀愁を漂わせているルークの背中にそう言う。 「ちげ〜ぇよ。チビガキ、アホ顔と話たいってだけだろうが!」 「へえ〜?」 小走りして追い付いたルークを、リナは面白がる様に見る。 「・・・ちっ、口の減らん嬢ちゃんだな。」 「・・・ルーク。」 「あ゛?」 「あの話、一切言わないでくれる?」 「俺に、何のメリットがある?」 「さっきミリーナに、あんたに助けられた話した事でチャラにしてくんない?」 「ふ〜ん。もうしゃべってたとしたら?」 「ありえない。あんたの利益になんないじゃない。ま、念の為に、ね。」 「ふん・・・さて、何の事か俺には見当がつかんが・・・」 「分かってんでしょ、本当は?」 「さあな、あんたは、どう思う?」 言って、リナとルークは暫く無言で歩く。 「ん・・・どうやら、不毛ね。ま、今日は、お互い痛み分け、て事になるわね。」 「ふん。言っとくが、馴れ合う気は無いからな。お宝を探している以上は、手を組む事はない。」 「そうね。次はどこの遺跡で会うか、分からないもの。」 不敵に笑い合い、ルークとリナは、足を止める。 そこは、まさに4人が再会を果たした場所であり、2人が互いを出し抜こうと、駆け出した三叉路であっ た。 ――――― 「今日は、お疲れ様でした。」 「いや、ミリーナがいてくれて、助かったよ。」 ミリーナとガウリイは、静かに互いを労った。 「でも、不謹慎ですけど、ガウリイさんと話が出来て良かったです。」 「ああ、俺もだ。変に茶化されたりしないから、話易かったしな。」 「茶化されるのは、苦手ですか?」 「ああ。前にな、リナとオレと、他に2人で旅してた時にな、その2人がお節介ついでに茶化してくれたんだが・・・こっちはトコトン疲れるだけで、向こうばっかり楽しそうだったからなあ。」 「私も、苦手ですね。男との2人旅と知ると、大体の方が変に勘繰ったりされますが、その度に、嫌な思いをしてました。」 「だな、ほっといてくれ、て感じだよな。」 「本当ですね。」 眉を寄せて言ったガウリイの言葉に、ミリーナは小さく頷いた。 ――――― 「ど?話、終った?」 「ええ。」 再び合流したリナの言葉に、ミリーナは頷く。 「そう。」 「ありがとうございます。」 「へ?いや、お礼言われる事していないわよ。」 「そうですか?」 「そうよ。じゃ、元気でね、ミリーナ。また、会いましょ、出来ればルーク抜きで、ね。」 「それも無い事では無いですね。リナさん達もお元気で。」 「今度、ハンカチ返すから。」 ミリーナとリナは軽く握手して別々の道へと向かう、ルークとガウリイは軽く目を合わせ笑い、それぞれの後を追った。 |
≪続く≫ |